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複製技術の登場と映画産業の国際化

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複製技術としての写真と映画

絵入り新聞のように、リトグラフィは活字と相性がよかったのに対し、写真技術は迅速化ゆえに、トーキー映画のように、話すことと相性がよかった。

store frontよく知られるように、写真と映画の台頭とその威力を、ヴァルター・ベンヤミンは「複製技術の時代における芸術作品」として論じている。

ベンヤミンによると、写真は以下のようなインパクトをもっていた。

(本物としての唯一・1回きりという権威は)相手が技術的複製となると、そうはいかなくなってしまう。ここにはふたつの原因がある。まず技術的複製は、オリジナルにたいして、手工的複製のばあいよりも、あきらかにより高度の独立性をもっている。
※ヴァルター・ベンヤミン『ベンヤミン著作集2 複製技術時代の芸術』佐々木基一編集解説、晶文社、1970年、13ページ。『ベンヤミン・コレクションI 近代の意味』(筑摩書房、1995年)では、588-589ページ。

また、映画・レコードについては、以下のような影響を挙げている。映画の特徴を極端に推し進めれば、CD・DVDについても以下の指摘は当てはまるだろう。

つぎに複製技術は、オリジナルの模造品をオリジナルそのものではとうてい考えられない状況のなかにおくこともできる。…中略…オリジナルそのものを視聴者のほうに近付けることが可能となるのである。
※ヴァルター・ベンヤミン『ベンヤミン著作集2 複製技術時代の芸術』佐々木基一編集解説、晶文社、1970年、13ページ。『ベンヤミン・コレクションI 近代の意味』(筑摩書房、1995年)では、588-589ページ。

hollywood芸術作品と呼べるかどうかはともかく、現代ではホームページの存在場所がサーバーであるという、いわばオリジナルの空洞化も十分に検討の余地がある。最終形態は『マトリックス』三部作というところか。
※ウォシャウスキー兄弟『マトリックス』(原題:THE MATRIX)アメリカ合衆国、1999年。同『マトリックス・リローデッド』(原題:THE MATRIX RELOADED)2003年、同『マトリックス・レボリューションズ』(原題:The Matrix Revolutions)2003年。

さて、複製技術を利用する際の主要な身体器官についてみると、技術のコントロール機能が手から目へシフトした点を強調できる。これは、カール・マルクスが『資本論』で指摘したように、産業革命にみられた生産技術の本質的な変化と同じ事態であった。つまり、人間の意志が及ばない範囲を扱う機械を人間は目によって監視し、手によって制御したり、誤動作を修正したりする技術へと変化したのである。すなわち、19世紀までに生産技術において、19世紀後半には写真技術において、そして、20世紀に映画技術において、身体機能が変化したのである。

Marlene Dietrich

映画産業の国際化

ハリウッドは、グレタ・ガルボ(スウェーデン)、マレーネ・ディートリッヒ(ドイツ)をはじめ、ブルース・リー(香港)、ジェット・リー(中国)、チョウ・ユンファ(香港)ら中華圏の俳優たちも含め、実にさまざまな場所から俳優たちが集まってきた場所である。

また、20世紀初期のハリウッド映画産業をリードしたのは、Metro-Goldwyn-Mayer Inc.(メトロ・ゴールドウィン・メイヤー社、略号MGM)であった。

Metro-Goldwyn-Mayer Inc. is an independent, privately-held motion picture, television, home video, and theatrical production and distribution company. The company owns the world's largest library of modern films, comprising approximately 4,000 titles, and over 10,400 episodes of television programming. Its film library has received 208 Academy Awards, one of the largest award winning collections in the world, and includes numerous successful film franchises, including James Bond, Pink Panther and Rocky. MGM is owned by an investor consortium comprised of Providence Equity Partners, Texas Pacific Group, Sony Corporation of America, Comcast Corporation, DLJ Merchant Banking Partners and Quadrangle Group.
* http://www.mgm.com/corp_history.do

俳優・デザイナーの集中、国際資本の台頭(MGM等)なども含めて、映画産業として栄えてきたハリウッドこそが、20世紀の首都に相応しい。おそらくは、ヴァルター・ベンヤミンも首肯するであろう。もっとも、国際化というものに短所がないわけではないのだが。なぜなら、映画産業の国際化がハリウッドで実現する限り、それはハリウッドのもの、そして合衆国のものだからである。

映画産業の国際化の場合、単発的でセンセーショナルなもの、いいかえれば遊園地的なものに陥りやすいアメリカ資本の映画に対抗する動きは、20世紀を通じて、大きく2つの方法があった。

Francois Truffaut, le dernier metro一つには、明らかに敵視しながら、時には合衆国産の芸術、歴史、恋愛、アクションの一切が一時的体験に過ぎない遊園地的・幼稚なものだという露骨な批判であり、合衆国のみならず、資本主義社会の弊害を露呈する哲学的で画期的な動きが見られた。この動きは、ジャン・リュック・ゴダールをはじめとするフランス中心(ヨーロッパ中心)の映画に顕著である。ゴダール以外にも、例えば、第2次世界大戦下のドイツ占領下・空爆下のフランスにおける劇団の運営と恋愛を描き出したフランソワ・トリュフォーのような恋愛映画『終電車』は、合衆国資本では制作不可能であろう。

また、二つには、中華圏映画を挙げねばならない。中国、香港、台湾は、歴史的背景が異なり、政治体制にもヨーロッパや日本の植民地であった傷跡や内戦の爪痕が大きいものの、圏内を中心に、俳優や監督たちが越境し続けている(つまり、映画に関しては、中華人民共和国、香港、台湾に国境はない)。さらに、20世紀末には、名俳優たちが挙ってハリウッドへ渡ったが、中華圏映画の強みは、資本という、国境を簡単に越える代物に対し、俳優や監督たち自身が大量の人員を動員して国境を簡単に越えることで抵抗している点にある。

Zhang Ziyi, Hero中華圏映画のハリウッド進出は、まずはカンフー映画から始められた。ブルース・リー(李小龍)、ジャッキー・チェン(成龍)、ジェット・リー(リー・リンチェイ;李連杰)。また、20世紀末には、コン・リー(鞏俐)、チャン・ツーイー(章子怡)、マギー・チャン(張曼玉)らがハリウッド・デビューを果たしている。張の場合はカンヌまでターゲットに入れている。監督では、ウォン・カーウァイ(王家衛)を念頭に、やはり中華圏の俳優たちを織り交ぜながら、アジアの相対化を図る名作が作られている。

  • 『欲望の翼』(1990年、香港、原題:阿飛正傳/英題:Days of Being Wild)
  • 『恋する惑星』(1994年、香港、原題:重慶森林/英題:Chungking Express)
  • 『天使の涙』(1995年、香港、原題:堕落天使/英題:Fallen Angels)
  • 『ブエノスアイレス』(1997年、香港、原題:春光乍洩/英題:Happy Together)
  • 『花様年華』(2000年、香港、原題:花樣年華/英題:In the Mood for Love)
等々。

ウォン・カーウァイ『阿飛正傳』中国語版(香港版)の場合、DVDの字幕は、Traditional Chinese、Simplified Chinese、English、Japanese、Korean、Bahasa Malaysia、Bahasa Indonesia、Thai、Vietnam、に及んでおり、香港版1本で地球上の2分の1前後の人間が母国語で鑑賞することができる。

なお、戦前期「旧満州」→日本(新東宝)→香港といった場所で映画活動を行なった日本人カメラマン西本正の対談集からは、東アジア映画からみた20世紀の歴史がよく分かる。西本正、山田宏一、山根貞男『香港への道 – 中川信夫からブルース・リーへ』筑摩書房 、2004年。帯には、「映画は越境する!」という興味深いフレーズが記されている。

Marlene Dietlich des Blonde Venus

『モード・イン・ハリウッド - デザイナーと女優たち』目次抜粋

登載女優19名中、アメリカ出身以外8名

  • 最新モードの流行はハリウッドから 29
  • 北欧の神秘的表情が魅力 グレタ・ガルボ 35 ※Greta Garbo
  • ドイツからきたマニッシュ・ルックのディートリッヒ 38 ※Marlene Dietrich
  • エレガントな令嬢女優 グレース・ケリー 66  ※エルメスのザック・ア・クロワ
  • 官能のリズムにみちあふれていたマリリン・モンロー 68
  • “永遠の清純スター”オードリー・ヘプバーン 70

高橋暎一『モード・イン・ハリウッド - デザイナーと女優たち』フィルムアート社、1992年


【参考文献】
高橋暎一『モード・イン・ハリウッド - デザイナーと女優たち』フィルムアート社、1992年
ヴァルター・ベンヤミン『ベンヤミン・コレクションI 近代の意味』浅井健二郎編訳、筑摩書房、1995年
ヴァルター・ベンヤミン『ベンヤミン著作集6 ボードレール』川村二郎・野村修編集解説、晶文社、1975年