フセインの死刑執行とブッシュの死刑未執行
einbahnstrasse > 21世紀の首都 - ユーラシア大陸 >2006年12月30日、イラク元大統領サダム・フセインが死刑になった。
12月30日とは何だったのか?
という問題を立てたとき、僕たちは「フセインに死刑が執行された日」として記憶するのが癖になっている。この解答は正解ではあるが、だからといって僕の気持ちが平穏になることはない。
この不穏さの源に、僕たちが答えるべき解答がもう一つある。
それは、「アメリカ大統領ジョージ・ウォーカー・ブッシュが死刑にならなかった日である」という解答である。
「フセインの死刑執行、住民虐殺「人道に対する罪」」
【カイロ=長谷川由紀】イラク中部ドゥジャイルのイスラム教シーア派住民148人を殺害した「人道に対する罪」で死刑が確定していた同国元大統領サダム・フセイン(69)に対し、絞首刑による死刑が30日午前6時(日本時間同日正午)ごろ執行された。
同国国営テレビが伝えた。約30年にわたり同国を強権支配、2003年のイラク戦争で政権の座を追われた独裁者は、自国民の手で裁かれ、「罪人」として刑死した。
マリキ政権は処刑で求心力回復を期待するが、旧政権残党などの報復攻撃が激化、治安がさらに悪化する懸念もある。
フセインは、軍などのクーデターでバース党政権が誕生した翌年の1969年、最高意思決定機関「革命指導評議会」副議長に就任して実権を掌握し、79年に大統領に就任した。イラン・イラク戦争(80~88年)やクウェート侵攻(90年)を指揮。国内では、政敵や反体制勢力を力で徹底排除・弾圧する恐怖政治を敷いた。米軍主導のイラク戦争で03年4月に政権は崩壊、同年12月、出身地のティクリート郊外の潜伏先で米軍に拘束された。
12月30日14時46分配信 読売新聞
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20061230-00000002-yom-int
下線箇所は第1次イラク戦争に関わる話であり、斜体箇所の第2次イラク戦争とは関連がない。ただし、2度にわたる湾岸戦争は、アメリカ合衆国からみれば、自分に似た国家の一つとして攻撃した関連性がある(両大統領も親子)。やはり、21世紀に生きる人間の課題は、ユーラシア大陸の連携に尽きる。マリキ政権は傀儡政権であり様々な宗派の抗争を抱え込んでいるが、2度のイラク戦争や911テロそのものは、宗教にもとづいた戦争やテロであったわけではないことを理解すべきである。なぜなら、実際に日本や韓国は、実質的にみて湾岸戦争に参戦・加担してしまっただけでなく、ビンラディンとてバチカンへ航空機を飛ばしたわけではないからだ。
ブッシュ米大統領「イラク民主化の重要な節目」と声明
【ワシントン=貞広貴志】イラクの元大統領フセインの死刑執行について、ブッシュ米大統領は29日、「イラクでの暴力を止めるものではないが、イラクの民主化において重要な節目となる」とする声明を出した。
12月30日14時46分配信 読売新聞
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20061230-00000103-yom-int
このニュースは「イラク」という文字を「世界」や「地球」と読み替えると、ブッシュ自身の自殺宣言となるのだが、このようなブッシュの発言がまかり通る現代の国際政治上の不安定性を忘れてはならない。また、フセインの死刑が「イラクの民主化において重要な節目となる」と仮定しても、世界の民主化には何の役にも立たない。
そもそも、人間のもつとされてきた基本的人権は、北半球のアメリカ大陸で最も高く(あるいは合衆国人が高く)、アジアになると低くなっている不均衡な状態であることは知っておいてほしい。911のテロ被害者数に対し、911以後における西アジアの戦争被害者数を比較してみよ。アジアの人間が50~1,000名程度で、やっとアメリカ合衆国国民1人の人権に匹敵することが分かるが、この事実こそ、アメリカ合衆国の言う民主主義である。
そして、考えてほしい、「テロは犯罪だ・戦争だ」と小泉もブッシュも言ったが、だからといって、テロを仕掛けた人間に対して戦争を行なうことができるのか(相手は国ではなく集団である)? そして、テロに対する報復として仕掛ける戦争自体は、なぜ犯罪だと考えられないのか? なぜ、戦争だけが許されて、テロは許されないのか(両方とも許されるべきものではない)。ビンラディンやフセインは確かに犯罪者であるが、なぜ、ブッシュは犯罪者ではないのか?
A国がB国を侵略・植民地化した場合に、C国がA国を追い出すという名目でB国を侵略・植民地化する展開は、20世紀中期に大日本帝国が東南アジア諸国に対して行なったものだが、この侵略パターンは21世紀に阻止できるのか?
ブッシュ大統領という野獣
極東国際軍事裁判(東京裁判)と湾岸戦争後の裁判との関連を論じ、この60年間、「勝者の正義」や「強者の論理」が変わっていない点を強調したコラム「Web東奥・天地人20031219」と、フセイン元大統領が拘束時に所有していた銃をホワイトハウスでブッシュ大統領が所持品として自慢げに見せびらかせた野蛮さ・品性のなさについて糾弾した神戸新聞のコラムとは一読に値する。ブッシュを見るかぎり、ナポレオンの時代以降、人間の愚劣さは底無しに度を増している。
なお、以下のページは子供向けで分かりやすい。「ニュースでジャンケンポン - フセイン大統領がつかまってもイラクの戦争状態はなぜつづく?」。ただし、イスラム教のスンニ派やシーア派に見られる宗教上の分裂や対立に目を奪われてはいけない。なぜなら、繰り返しいうように、湾岸戦争は宗教戦争ではないのだから。



